「明日に架ける橋」とドラッグ・カルチャーの話

2012/04/27

こちらを読ませていただいて。面白く読ませていただきました。

他にもあるかもしれませんが、何にしてもいい話のはずはありません。だって、troubled water から逃げ、隔離されてる状態で、良いことがあるはずは無い。そして、執拗に「君」を保護しようとする「私」ってのは、必ずしも「いい人」ではないのではないかと思い到ります。ただ優しくして慰めるだけで、現実と接触させまいとする友情なんてないでしょう。

Beatles の楽曲をはじめとして,歌詞がドラッグを暗喩しているとする解釈はあちこちにあるんですけれど,これを考える上では,当時(1960年代)のサブカル事情もある程度踏まえている必要があるんでねいかとは思うわけです。つまり,当時のいわゆるドラッグ・カルチャーにおいて,ドラッグがどのような地位を占めていたのかということ。ま,あたしも生まれる前の話だから,よく知らないんだけれども。

少なくとも,あたしが踏まえているドラッグ・カルチャーは,厳しい現実からの「脱出」や「逃避」といった意味合いではなくて,もう少し神秘論的というかユートピア論的というか,ある意味「解脱」的な要素が強い印象があります。つまり,ドラッグを使用することで新たな人間を発見するとか,可能性に触れるとかいったものです。んなもんで,現にそこにある苦難から逃避する意味合いでドラッグが出てくるのだとすれば,それは「マジ」でドラッグに依存せざるをえない境遇にいる人の話なわけで,それはドラッグ・カルチャーからすればモグリの類になるんじゃないだろうか,とか思います。

個人的なイメージで言うと,ドラッグ・カルチャーにおけるドラッグは「鍵」とか「スイッチ」とかといった「きっかけ」のような隠喩がふさわしい。それを使うとパチンと新しい自分に切り替わるようなイメージです。その意味で,引用の解釈はドラッグに対する現代的な(つまりネガティブな)隠喩が,知らずに折り込まれているようにも思います。

それとですね。橋の隠喩の話をすると,一般的には「脱出経路」的な意味合いはあまりない。これは英語圏でも(おそらく)同じ。橋が隠喩するものは,どちらかというと,この場所とかの場所を「つなぐ」「運ぶ」「制御する」といった意味合いです。かの出エジプト記にしても,これはかの場所(約束の地)に向かうといった意味で,目的地が定まっています。「苦しくないここ以外のどこか」といった抽象的な場所に向かうのに使われるのは,おそらく橋ではないのではないかと思います。

あたしは,この歌詞について特段ドラッグ・カルチャーを想起させるような要素はないと考えていて,単に愛する人を支える歌なんでねいかと思っています(その意味では友情の歌でもないと思う)。愛する人は,友人でも恋人でも自分の子どもでも,なんでもいいんだと思う。

私はあなたが求めていることをなんでもしますよ。それだけ愛しているんですよ。見返りは求めません。あなたがそれでかの地に行けた(目的を達した)として,私という橋が不要になったとしても,もしあなたが私を必要としてくれるなら,喜んで支えていきますよ,とかいった具合。きもいかもしれないけれども,ま,そゆ歌は洋の東西を問わずあちこちにある。

もう少し言うと,時代が前後するけれど,この歌詞で想起するのは,あたしの場合 John Lennon の Beautiful Boy だったりします。

Beautiful Boy

Out on the ocean sailing away
I can hardly wait
To see you come of age
But I guess we'll both just have to be patient
'Cause it's a long way to go
A hard row to hoe
Yes it's a long way to go
But in the meantime</para>

<para>Before you cross the street
Take my hand
Life is what happens to you
While you're busy making other plans

一般的に,sailing は journey の比喩なわけで,それは明日に架ける橋と同じなのだと思う(A hard row to hoe とゆこと)。そして,これは自分に子どもができて思うことだけれども,子どもに take my hand というときの心持ちと,明日に架ける橋の心持ちは通じるものがあるのだと思う。傍から見るときもいかもしれないけれども。

隠喩めいた楽曲には,様々な解釈があっていいと思うし,それこそが音楽の力であり詩の目的なのだとも思います。けど,この曲にドラッグ・カルチャーを持ち出すのは,少し穿ってるのかなぁとも。ま,そんだけ。

Site Navigation
SNS Accounts (@aian)

普段はここら辺に住んでいます.