『ピアッシング』

2005/02/01

ピアッシング』(村上龍,幻冬社文庫,1994年)

1年前に読んで,見事マイ・ゴールデン・ラズベリー賞にノミネートされた作品です。あくまでも,「マイ」ですけどね,「マイ」。今回,1年ぶりに読み直したんです。時間が経って,少しは評価も変わるだろうと思っていたけれど,やはり,あたしにとってはラズベリー……。

村上龍が好きな向きって巷には多いみたいですけれど,どこら辺がいいのか分からなくて,読後の度に唸ってしまいます……。

本作がイマイチというのは,説明不足というか,実感の欠如というか……寓話と実話の間をさまよう気持ちの悪い感覚が残るからです。この感覚,筆者の表現力や着想以前の問題として,大風呂敷を広げてしまった「アチャー」な感じだとも言えます。こういう主題って,一般に馴染みがないだけに,扱うのに難儀するんですよね。

本作の場合,殺人衝動を持つ男と自殺願望を持つ女が出てくるわけで,異質な世界を演出しようと努めてはいます。ただ,「仮面ライダー」よろしく,

説明しようっ!川島昌之は,蛋白質の焼ける臭いがすると,人を殺したくなるのだぁーっ!

みたいな文句が,どうも漫画チックでトホホな感じがします。やっぱり大風呂敷だったんじゃないでしょうか……殺人の衝動ってそんなに単純なモノとは思えないんですけれど……。

また,本作の主題との関係で,殺人衝動(自殺願望)を持つ人間を登場させる必然性があったのかも,疑問です。つまり,極論すれば,ここに登場する女を「ハムスターが大好きな女」にすげ替えたとしても,物語のテーマ全体は大して変わらないんじゃないかということです。(もちろん,粗筋は大きく変わるだろうけれど)。このことは,すなわち,筆者が,「生」との関係で「自殺」をどのように位置付けているのか,また,女が「自殺」をどのように位置付けているのか,さらに,筆者にとって,「自殺(他殺)」が必然的に重要な主題なのか,といった点と結びつきます。

あたしの場合,どうしてもそれが読めないんです。おそらく,ここら辺が,あたしの「イマイチ感」であり「アチャー感」であり,「説明不足感」なんでしょう……。とはいえ,村上氏は大人気だし,あたしの読み方がいけないんでしょうかね……なんとも,いやはや……。

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